21日。東京国立博物館で開催中の『空海と密教美術』展を観て来た。
いつものように上野行きの特急電車に乗り、開館前には入り口に着いた。ここでの大きな企画展は混雑が予想されるからだ。
ところが、この日はオープンして2日目で台風の影響もあり並んだ観客は100人弱と少なめだった。
なんといっても今展、出展美術品の9割が国宝・重文という密教美術の名宝が勢ぞろいということで、入場する前から久しぶりに胸中が高ぶってしまう。
会場に入ると凛とした『弘法大師像』の肖像画が出迎えてくれた。最初に目にとまったのは空海20代の著作『聾瞽指帰(ろうこしいき)』の草稿などの直筆の書である。嵯峨天皇、橘逸勢とならび3筆に数えられる名筆が目の前に広がっているのだ。
書に関してはまったく素人の僕だが、そのカッチリとして均整のとれた書体に思わず引き込まれてしまう。この書だけみても空海という人の偉大さが伝わってくる。
それから1200年ほど前の平安時代に書かれたものがきれいに保存されていて今更ながら和紙と墨の強靭さに感心してしまった。
第1章から第4章まで空海の求道の足跡を追うように構成されている会場を順番に見ていくと、曼荼羅や法具、仏像諸尊が次々と登場し、息をつく間もないほどだ。
しかしなんといっても今展のメインイベントは、京都・教王護国寺(東寺)の講堂より出展された仏像曼荼羅である。21体のうちの8体ではあったが、会場で諸像の間を移動しながら体感できるように配置構成されている。歩いていると密教の持つ、深遠な神秘的空間に時間のたつのも忘れ、いつの間にかぐるぐると何周もしていた。
これから9月までの長い会期、展示替えもあるようなので、もう1度行きたいと思っている。
酷暑の続く夏、まだご覧になっていない方は、涼しい館内で、空海の深い精神性に触れてみてはいかがだろうか。
画像は博物館の壁に掛けられた今展の看板。
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